解説
物性値の推算・計算ワークフロー
酸素・窒素・水素・CO2・アルゴン・ヘリウム・乾燥空気について、密度・比熱・粘度の対応ツールと範囲の確認先を整理します。得られた値を顕熱量や動粘度の入力欄へ、条件・単位とともに移すガイドです。
本文更新日: 2026-09-06
今回の更新: 物質別の対応先、比熱・粘度の正確な範囲、密度との条件照合、Cp°と質量基準比熱の転記先を整理しました。
転記手順を使うページ: 条件がそろった物性値を、根拠と条件ラベルを失わずに計算フォームへ移します。まず物質別に使える計算と範囲を探し、得られた値を次の入力欄へ対応付けます。
物質から密度・比熱・粘度の入口を選ぶ
同じ物質でも、3種類の物性がすべて選べるとは限りません。次は物性値の表ではなく、現在の物質選択型ツールの対応表です。リンク先で対象物質を選び直してください。
表は横にスクロールできます。
| 探している物質 | 気体密度 | 気体比熱(Cp°) | 気体の動的粘度 |
|---|---|---|---|
| 酸素・窒素・二酸化炭素・アルゴン・ヘリウム | 密度を計算 | Cp°を計算 | 粘度を補間 |
| 水素 | 密度を計算 | Cp°を計算 | 対象外。採用資料に水素の係数なし |
| 乾燥空気 | 米国標準大気1976の分子量で計算 | 対象外。純ガス係数だけを掲載 | NBS資料の乾燥空気として補間 |
| 水・水蒸気・油・任意組成の混合物 | 物質選択の対象外 | 物質選択の対象外 | 物質選択の対象外 |
乾燥空気は密度と粘度で採用資料・組成基準が異なります。同じ名称だけで組み合わせず、両方の基準が対象に対応するか確認します。純ガスの選択肢も、液体窒素や液化CO2の物性へ切り替わるものではありません。
正確な範囲を確認する場所
- 比熱: 酸素・窒素は
100〜6000 K、水素・二酸化炭素・アルゴン・ヘリウムは298〜6000 Kです。気体比熱ページの「物質ごとの温度区間」で係数の切替温度まで確認し、計算後は「使用係数区間の下限・上限」と補足の係数を記録します。298 K = 24.85 ℃なので、水素などの20 ℃は対象外です。 - 粘度: 温度・絶対圧の上下限は物質別です。気体粘度ページの「計算できる範囲」で対象の行を探してください。窒素は49.80 ℃、CO2は49.12 ℃が上限なので、6候補共通で50 ℃まで使えるわけではありません。計算後も結果の採用範囲と「式に使用した温度」「式に使用した絶対圧」、補足の表・式番号を照合します。
- 密度: 気体密度ページが選ぶのは分子量です。比熱・粘度のような物質別の有効温度・圧力範囲表はなく、
rho = P M / (Z R T)に使う理想気体近似または出典Zの適用条件を利用者が確認します。正の絶対温度・絶対圧を入力できることは、物理的な適用範囲の保証ではありません。
比熱の温度範囲、粘度の温度・圧力範囲はツールが検査します。一方、相・純度・組成の適合は利用者による確認であり、自動判定ではありません。比熱ツールには圧力入力がなく、高圧実在気体かどうかも判定しません。密度・粘度の1 MPa以上の警告も、相境界や一律の適用上限ではありません。
物質名だけで物性値を計算できますか? 物質名だけでは足りません。上記の範囲と、対象の温度・圧力・相・組成が対応して初めて入力候補になります。
条件がそろった値を入力欄へ移す
ここからは、すでに入力候補にできると判断した値を、フォームの入力欄へ対応付けて移す段階です。入力欄へ進めるかを短時間で判定する場合は、物性値を推算する前に確認することへ戻ります。入力可否の「進める/停止」は、物性値を推算する前に確認することで済ませた前提です。
比熱から顕熱量へ
顕熱量計算では「熱容量の条件」を定圧にし、質量基準なら出力の質量基準の定圧比熱 cp を「質量基準の比熱容量 c」へ、モル基準なら Cp° を「モル基準の熱容量 C_m」へ移します。J/(mol K) の値を kJ/(kg K) の欄へそのまま入れないでください。
一点の温度で求めた値を使うため、対象温度区間で一定熱容量とみなせる根拠を別途確認します。係数区間内に収まるだけでは一定値近似の根拠になりません。広い温度差では積分やエンタルピー差を確認し、定容条件にCp°を転用しません。
粘度から動粘度・Reynolds数へ
動粘度・動的粘度の換算で nu = mu / rho とするには、粘度だけでなく同じ物質・温度・絶対圧・組成の密度が必要です。密度を上の物質選択型ツールで求める場合も、粘度の適用範囲に入ることを理由に Z = 1 と決めないでください。
粘度換算・Reynolds数の入力欄にμPa·sの選択肢はありません。気体粘度側の出力をPa·sまたはmPa·sへ切り替え、移動先でも同じ単位を選んで転記します。
Reynolds数計算は管内の単相・ニュートン流体を対象とし、密度と動的粘度を入力します。動粘度の入力欄はないので、この計算へ進むだけなら動粘度への換算は不要です。標準状態の密度と運転温度の粘度を混ぜると、単位が合っていても同じ状態のReynolds数になりません。
このページのリンクは条件を自動転記しません。値と単位は手元のメモから対応付け、確認済みの選択は引き継がず、移動先の用途・条件に対して改めて確認してください。
入力前に残す転記メモ
フォームへ値を入れる前に、資料から次の項目を一組で転記します。どれかを追えない場合は、数値だけを先に入力しません。
対象資料:
対象物質・組成:
値と単位:
温度・圧力・相・基準:
式・係数と適用範囲:
使う目的(概算・検算):
対象資料には文書名だけでなく表・式番号や参照箇所を残し、値には移動先の入力欄名を添えます。計算後は「概算に採用」「原典照合まで保留」「条件不足で停止」のいずれかと、その理由を一つ記録します。例題の再現一致は演算確認であり、対象物質への適用を確認したことにはなりません。
物質選択にない場合・資料値を持っている場合
未掲載の物質や別相だからといって、任意入力型へ移れば計算できるわけではありません。次の式に合う資料値・係数・適用範囲を確認できた場合だけ使います。
表は横にスクロールできます。
| やりたいこと | 計算ページ | 転記メモで特に残す項目 |
|---|---|---|
| 単一気体の密度を概算する | 理想気体の密度計算 | 絶対圧、絶対温度、分子量、Zの扱い |
| 混合気体の平均分子量と密度を概算する | 混合気体の平均分子量・密度計算 | mol%またはモル分率、dry/wet、各成分の分子量、Z |
| 液体密度を温度補正する | 密度の温度補正計算 | 基準密度、基準温度、補正先温度、beta、同一圧力条件 |
| 資料の比熱から顕熱量を概算する | 顕熱量計算 | 質量/モル基準、定圧/定容、温度区間、同一相・非反応条件 |
| 粘度を別温度へ概算補正する | 粘度の温度補正計算 | 基準粘度、基準温度、補正先温度、係数B、式形と範囲 |
根拠を記録できないときは物性値推算で使う出典の選び方へ、単位・基準が読めないときは物性単位と基準の確認ガイドへ戻ります。混合物、二相、非ニュートン性がある場合は、混合物・非理想系の注意点で式を流用できない条件を確認してください。
この手順は概算・検算用です。設計、安全、法令、品質保証などの最終判断や、資料の採否の決定は行いません。
参考資料と確認範囲
このページの式、単位、定義、入力条件、適用範囲を確認するために参照した資料です。各資料が支える範囲は「確認範囲」に示します。個別の物性値、製品仕様、法規、設計条件については原典を確認してください。
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NIST Chemistry WebBook: Thermophysical Properties of Fluid Systems
確認範囲: 物性値を温度、圧力、物質・相などの条件と対応させて確認する入口
資料確認日: 2026-07-17
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BIPM: The International System of Units (SI Brochure)
確認範囲: 物性値、温度、圧力、密度などを記録するときのSI単位・表記
資料確認日: 2026-07-17
実務利用上の注意
本サイトの計算結果は、入力条件、単位、前提、適用範囲により変わります。 最終的な設計判断、安全判断、法令判断、購買判断、運転条件の決定には、原典、 社内基準、適用規格、専門家による確認を優先してください。
よくある質問
このページだけで酸素密度、水素比熱、水の粘度などを出せますか?
このガイド自体は計算しません。酸素の気体密度と水素のCp°はリンク先の物質選択型ツールに対応しますが、水の粘度は未対応です。任意入力型も、対象に合う式・資料値・係数・適用範囲を確認できる場合だけ使い、未対応の代替値を自動で補いません。
物性値が見つかったらすぐ計算に入れてよいですか?
すぐには入れないでください。値の単位、温度、圧力、相、組成、代表値か保証値か、測定値か推算値かを確認してから使います。条件が不明な値は、計算結果がもっともらしく見えても誤用になることがあります。
物質名だけで物性値を計算できますか?
物質名に加え、密度は温度・絶対圧・Z、比熱は入力温度と物質別係数区間、粘度は物質別の温度・絶対圧の採用範囲を確認します。相・純度・組成は利用者が確認し、確認欄の選択を自動の相判定とみなしません。